Room JP20

コード・ソロとリズム・ギターを中心にジャズを楽しむブログです。

パット・メセニーを聴くなら押さえておきたいアルバム3作

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パット・メセニーのおすすめ曲を紹介しましたが、まだまだ紹介し足りない……!

というわけで今度はアルバム単位で紹介しようと思います。

収録曲が良いというのもありますが、アルバム全体を通して聴いてみてほしい作品を挙げてみました。

Secret Story

Pat Metheny Secret Story

Facing West

Facing West

  • パット・メセニー・グループ
  • ジャズ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

Secret Story』は僕が初めて買ったメセニーの作品です。ブックオフで中古ですがね。

このアルバムは1曲1曲の作品の集まりというよりも、全14トラックを合わせて1つの作品といった感じです。いわるゆコンセプト・アルバムと言っていいのではないでしょうか。

ジャズを喫茶店やバーで流れている渋い音楽だと思っている人が聴くと「これがジャズ?」と疑うことでしょう。

実際ジャズ・ギタリストの作品だからジャズのコーナーに置かれているのですが、ジャズという音楽の垣根はとうに超えた作品です。

一言で言い表すならば「壮大」。1トラック目の「Above The Treetops」はカンボジアの霊歌から始まるのですが、この歌声を聴くと命の尊ささえも感じてしまいます。

この出だしだけでもグッと心を掴まれてしまい、これからどんな壮大な物語が始まるのかと期待と不安を煽ってきます。

そこから一転して2トラック目のFacing Westは明るくて希望に満ちたサウンドで、1トラック目はまだお腹の中にいるような暗闇だったのが、外の世界へ初めて触れたように光が一気に差し込むような気持ちになります。

個人的に好きなのが6トラック目のSunlight。曲名の通りすごく明るくて爽やかな曲。どれか1曲だけ選んでおすすめするならこの曲がみんな好きになってくれそうです。

メセニーの大失恋を乗り越えた大傑作

アルバムの終盤にかけて暗く悲しい感じの曲が続きます。

12トラック目のThe Truth Will Always Beは静かに始まり曲が進むにつれて盛り上がり、ギターシンセによる圧巻のギターソロが入ります。感情が溢れまくりで凄まじい泣きっぷりです。

泣きのギターの次はTell Her You Saw Meで母のような優しさで泣き止んだ後のような感覚になるのですが、次のNot to Be Forgotten (Our Final Hour)で曲名さながら悲しいラストを迎えます。ギターすら入っていません。

この終盤の悲しい雰囲気は物語の終わり、あるいは生命の終末のような感情を抱きます。その生命は人間に限定したものではなく、自然を含む生きとし生けるものすべてを包んでいるように思えます。

どうしてここまでメッセージが強いのか。実はこの『Secret Story』はメセニーが大失恋を乗り越えた末にできた作品とのこと。そんな背景もあってか、この作品の訴えてくる感情はとてつもなく強いです。

過去にひどく落ち込んだ時にこの作品に助けられたことがあります。メセニーのようにどれだけ偉大な人であってもひどく悲しいことはある。でも悲しみをエネルギーに変えて大きな作品を作り上げたということが、僕に勇気をくれたのです。

ちなみに10トラック目のAs a Flower Blossoms (I Am Running to You)では途中で日本語のささやきが聴こえます。彼女の歌声を知っていれば「ん、矢野顕子?」と気付くはず。

また、ディスク2枚組でボーナストラックとして5曲の未収録曲が入ったバージョンもあるとのこと。僕が持っているCDはディスク1枚のバージョンで、Apple Musicであれば15トラック目以降に2枚目の内容が入っています。

シークレット・ストーリー

シークレット・ストーリー

  • アーティスト: パット・メセニー
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2012/01/18
  • メディア: CD
  • クリック: 1回
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Question and Answer

Pat Metheny Question and Answer

Question and Answer

Question and Answer

  • パット・メセニー
  • ジャズ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

Question and Answer』はパット・メセニー・トリオによるアルバムで、『Secret Story』と違ってかなりジャズ路線です。

ギター、ベース(デイヴ・ホランド)、ドラム(ロイ・ヘインズ)というシンプルな編成ですので、メセニーのギターをしっかり聴きたいというのであればおすすめです。

Solar、All The Things You Are、Old Folksといったスタンダード曲も演奏しているのが特徴。特にAll The Things You Areは4度進行+転調の連続が特徴的なビ・バップでもよく演奏される曲で、メセニー節も聴けるため奏法を分析するにはちょうどいいんじゃないかなと思います。

スタンダード曲の中でお気に入りなのはOld Folks。バラードの名曲で、雨の降っている休日の部屋で聴きたい&弾きたい曲です。

メセニーのオリジナル曲も入っており、タイトル曲にもなっているQuestion and Answerは3拍子のマイナー調の曲。渋くてかっこいい曲です。

そして好きなのがChange of Heart。テーマのメロディは常に1弦の開放音が鳴っており、それが独特の響きを出しているんですね。

出だしの音は2弦5フレットと1弦開放、つまり両方同じ高さのE音なのですが、片方だけ鳴らすのとは全然違います。

僕だったら3度とか6度で安易にハモらせちゃうんですが、こういう弾き方もあるんだなぁ、と。

クエスチョン・アンド・アンサー

クエスチョン・アンド・アンサー

Still Life (Talking)

Pat Metheny Still Life(Talking)

Minuano (Six Eight)

Minuano (Six Eight)

  • Pat Metheny Group
  • ジャズ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

最後に紹介するのは『Still Life (Talking)』。パット・メセニー・グループ(PMG)という「メセニーと愉快な仲間たち」って感じの楽団による演奏です。

ブラジル音楽に影響を受けたメセニーが最初に発表したアルバムです。上記2つのアルバムで比較するならば『Secret Story』に近いテイストですね。

代表曲は1トラック目のMinuano (Six Eight)。Minuano(ミヌワノ)とは、ブラジル南部からウルグアイにかけて吹く冷たい風のことで、この時点で南米音楽の要素が入ってきています。

タイトルにある通り6/8拍子の曲です。実質的には3拍子でズン・チャ・チャのリズムなのですが、タ・タ・タ・タ・タ・タで解釈すべしということです。

曲の構成がすばらしいです。静かなイントロから盛り上がりつつギターとボーカルが美しいテーマ部分へ導入。ギター・ソロの後にピアノとマリンバによる間奏が入り、キーボードの上がっていくフレーズでテーマへ戻りクライマックスへ。ラララー!とズバッと終わると思わず立ち上がりたくなっちゃいます。

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極力公式以外の動画を紹介したくないのですが、メセニーを布教するために1つだけ貼らせてもらいましょう。

CDにあるイントロ部分は省略されているのですが、このライブ映像はとにかく感動。

メセニーのギターソロがかなり良いのと、間奏部分のオーディエンスの盛り上がり、そしてクライマックスの激しいギターストロークから演奏が終わるとオーディエンスが総立ち。洗練された演劇を観ているような感覚になります。

アルバム全体を通じてかっこいい曲が多く、Last Train Homeはエレクトリック・シタールを使ったノスタルジックなサウンド、Third Windはギターシンセを使ったスピーディで盛り上がる曲です。

同じブラジル音楽による影響を受けたアルバムとして『Letter From Home』もありますが、個人的には『Still Life (Talking)』の方をおすすめしますよ。もちろん両方聴くべきですがね。

Still Life (Talking)

Still Life (Talking)

メセニーは進化し続ける

最近はパット・メセニー・ユニティ・グループとしての活動はあるのですが、パット・メセニー・グループとしての活動はほとんどしておらず、特に盟友であるキーボードのライル・メイズの消息がありません。

年も年ですし、何か病気を患っているのではないかと心配です。再びメセニーと同じステージに立ってくれるのを期待しています。

メセニーは精力的に活動を続けており、「進化し続けるギタリスト」という異名もあります。新しい音楽を追求し続けるという意味でそう呼ばれるのでしょう。

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その象徴としてはOrchestrionというプロジェクト。なんとメセニーが弾くギター以外は楽器が独りでに動いて演奏するという異様な光景w

自動演奏のプログラムと、エレキ・ギターから出される信号に合わせて同じ音を鳴らす機能を使った画期的なシステムで、「ターミネーター楽団」と呼ばれることも。

一緒に音楽をやってくれる人に困ることはないのに、こんなシステムを作ってしまうて……。ある意味究極の「孤独のジャズ・ギター」ですw

今後もメセニーの活動に期待ですね。どんどん進化して音楽に革命をもたらしてほしいです。

Orchestrion

Orchestrion